本教室について

研究一覧

原発性アルドステロン症多施設共同レジストリ研究

内分泌疾患の多くは、患者さんの数が多くなく、それゆえ診療法の確立に必要な科学的根拠が十分ではありません。そこで、我々の教室では、全国の多くの大学病院や専門医療機関とネットワークを作り、共同のデータベースやレジストリを構築し、臨床で抱いた"問い"に対して答えを得るべく様々な大規模臨床研究を行っています。

例えば、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けた原発性アルドステロン症の診療の質向上に資するエビデンス構築(JPAS、JPAS-Ⅱ)や、難治性副腎疾患の診療に直結するエビデンス創出(JRAS)、国際医療センターを中心としたACPA-J研究にも中心施設の一つとして参画し、世界に向けて日本を代表した様々なエビデンスを発信しています。

これらの成果は、「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」、「原発性アルドステロン症診療ガイドライン 2021」や、「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン」など本邦のガイドラインに多数引用されそのエビデンスになっています。当教室ではこれらの研究成果を応用し、副腎疾患の患者さんに最新で適切な医療を提供していきます。

疾患iPS細胞を用いた病態研究

山中伸弥先生らが開発されたiPS細胞は、再生医療において大きな期待を浴びていますが、その価値の本質は単なる細胞材料としての利用にとどまりません。成長し老化した生体の細胞から、受精卵の胚性幹細胞(ES細胞)と同じ性質を持つiPS細胞が誘導できたという現象自体が、細胞の生命の時計を巻き戻すことができるという驚きの現象です。

また、iPS細胞はどの患者さんからも樹立できるため、例えばある遺伝子の異常により血管や、筋肉や、膵臓など様々な臓器に障害が起こるメカニズムを、その患者さんのiPS細胞を使って解明することができます。

当教室では、それら疾患iPS細胞を用いた代謝・内分泌疾患の病態解析を開始しており、現在、ミトコンドリア糖尿病疾患iPS細胞を用いた代謝異常の病態解析を行っています。

キメラ動物を用いた臓器補完技術

私たちは多能性幹細胞から機能的な内分泌臓器を作製することを目指しています。内分泌臓器の機能として1.ホルモンを分泌すること、2.周囲の環境に応じてその分泌量を調節できることが必要不可欠です。私たちは発生工学を応用した方法でこれら2つの条件を満たすマウス胚性幹細胞(ES細胞)由来の副甲状腺を作出しました(Kano M. et.al., PNAS, 2023)。まずCRISPR-Cas9を用いてマウス胚において副甲状腺発生に必須のGlial cells missing2(Gcm2)という遺伝子をノックアウトし副甲状腺欠損マウスを作製しました。次に副甲状腺欠損胚に副甲状腺を蛍光標識したPth-tdTomatoレポーターマウスES細胞を注入し、副甲状腺欠損マウスの中でマウスES細胞に由来する副甲状腺を作出しました。マウスES細胞由来の副甲状腺はカルシウムに応答して副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し、組織学的評価やシングルセル解析と合わせてその機能性を確認しました。さらに、マウス多能性幹細胞由来の副甲状腺は移植により術後副甲状腺機能低下症モデルマウスの病態を改善し、再生医療への可能性を示しました。本研究の成果は内分泌臓器再生のみならず、内分泌学の新しい研究ツールとしても有用です。再生医療および内分泌疾患研究に生かすべく、日々研究を行っています。

糖尿病治療による体組成・筋力への影響の前向き解析

本邦の2型糖尿病患者さんは、肥満によるインスリン抵抗性だけでなく、インスリン分泌不全を主病態とした非肥満の方も多く存在します。また、現在、糖尿病患者さんに対して、経口薬9種類、注射薬2種類の血糖降下薬が使用可能です。これらを患者さんの病態に合わせて、使い分ける必要があります。特に、体脂肪に及ぼす影響は薬剤によって、大きく異なります。

本研究ではイメグレミンを対象に各種画像検査で内臓脂肪量、肝内脂肪量を測定し、多角的に評価・検討しています。

糖尿病ケトアシドーシス治療の適正化

糖尿病ケトアシドーシスは絶対的なインスリン欠乏を原因とした、急性代謝失調のひとつで、未だ死亡率の高い合併症です。治療には経静脈的なインスリンの持続投与と大量補液を行いますが、電解質異常や脳浮腫に注意しながら管理する必要があります。現在、推奨されているインスリンや補液の投与量は海外でのデータを参考にしたものであり、日本人に対する治療として適切かどうかは検討が不十分です。当院は3次救急対応を行っており、数多くの糖尿病ケトアシドーシスの患者さんを治療してきました。本研究では、過去の糖尿病ケトアシドーシスの症例の経過を振り返ることで、治療の適正化を検討しています。

クッシング症候群術後の副腎機能回復を規定する因子の探索研究

当教室では、国立国際医療研究センターを代表とした難治性副腎疾患の診療の質向上と病態解明に関する研究(ACPA-J)に参加しており、そのレジストリを用いて、クッシング症候群の術後の副腎機能回復に影響する術前因子を明らかにするための研究を行っています。

フィブロスキャンを用いた糖尿病患者における肝脂肪蓄積・肝線維化の解析

本邦における2型糖尿病患者において,Fibroscan®を用いた非侵襲的なパラメータと,患者背景因子との間に関連があるかにつき検討を行っています。

胆道・膵疾患センターの膵切除患者における耐糖能・栄養状態の変化の解析

当院では消化器・一般外科,消化器内科,腫瘍内科などが中心になり,胆道・膵臓病センターを開設しております.当教室も参画し,膵疾患に伴う耐糖能異常や,膵臓を含めた神経内分泌腫瘍の診療に従事しております。膵臓は血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンを分泌しており,糖代謝には非常に重要な臓器です。そして,さまざまな疾患で膵臓を切除せざるを得ない患者さんも多くいらっしゃいます。一方で,膵臓を切除したことに伴う糖代謝への影響は十分に明らかになっておりません。また,膵臓は食べ物を消化・吸収するための消化酵素も分泌しており,膵臓の切除に伴う,栄養状態への影響も十分に明らかになっておりません。

当教室では膵切除術を受けられた患者さんの血糖やビタミンなどの推移を評価することで,膵切除の耐糖能や栄養状態への影響を明らかにするよう検討しています。

原発性アルドステロン症における病型毎のCASZ1変異率の検討

GDM産後follow

妊娠糖尿病は妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常ですが、妊娠糖尿病になった人は、将来、本当の糖尿病になりやすいと言われています。出産後の耐糖能異常のフォローの結果を今後の妊娠糖尿病のスクリーニング・診断、治療、産後フォローのあり方について検討しています。