診療内容
当科では、糖尿病・脂質異常症・肥満症などの代謝・栄養疾患と下垂体・甲状腺・副腎・副甲状腺・性腺などの内分泌疾患の診療を行っています。
外来診療
外来診療では新患外来(初めて当科を受診される方が対象です)、再診外来( 定期的に通院されている方が対象です)、糖尿病フットケア外来(糖尿病治療中で足に病変がある方が対象です)、透析予防外来(糖尿病性腎症をもつ方が対象です)、下垂体・甲状腺・副腎外来(下垂体疾患、甲状腺疾患、副腎疾患、性腺疾患などの内分泌疾患の専門的な診断・治療を行います)を行っています。
入院診療
入院診療では糖尿病、内分泌疾患の検査や治療を行うための入院診療を行っており、表のような各種の入院コースを設定しています。病院別館7階北病棟に糖尿病センターを設置し、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師と病棟薬剤師を配置し、糖尿病全般にわたる総合的な教育と治療にあたっています。内分泌疾患に対してはホルモン負荷試験検査、画像検査、核医学検査、副腎静脈・海綿静脈洞サンプリング等を実施し、的確な診断を行っていきます。また、腎泌尿器科・脳神経外科・乳腺内分泌外科・耳鼻咽喉科・放射線科など院内各科と連携を図り、最適な治療に取り組んでいきます。
主に診療している疾患について
糖尿病
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが十分に働かないことにより、血糖値が高くなってしまう疾患です。自覚症状は初期ではないことが多く、かなり血糖値が高くなってから症状が出ることが多いため、“サイレント・キラー”とも呼ばれています。血糖値が高い状態が続くことで、全身の血管の動脈硬化が進行し、多くの合併症を引き起こします。三大合併症といわれる神経障害・網膜症・腎症の他、心筋梗塞・脳梗塞などの様々な合併症があります。また、高血糖が進行すると、喉が渇く、尿の回数が増える、体がだるくなる、体重が減るなどの症状も起こってきます。高血糖の状態が続くと、意識障害をきたすこともあります。また、糖尿病は1型・2型・その他の疾患による糖尿病・妊娠糖尿病などに分類されます。治療としては、食事や運動などの生活習慣の改善と内服やインスリン注射による薬物治療があります。
当科では、食事療法・運動療法・薬物療法を行い血糖値の改善だけでなく、合併症の精査など体の状態を知り糖尿病の知識を得ていただく糖尿病教室に参加する糖尿病教育入院を行っています。
糖尿病は、生活習慣の問題だけでなく、遺伝的な素因や自己免疫なども関係した、だれにでも起こりうる病気です。以前は糖尿病の方は長生きできないと言われていましたが、現在は医療が発達し、適切に治療すれば一般の方と変わらない健やかな人生を送ることができます。そのためにささやかながら私たちがお手伝いできればと思います。
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い、もしくはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態をいいます。脂質異常症により症状をきたすことはありませんが、全身の動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈の血流が悪くなる病気を引き起こします。治療は食事療法・運動療法が主ですが、不十分な場合は薬物での治療を行います。
肥満症
肥満とは、体重が多いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。肥満自体は病気ではありませんが、肥満が進むと糖尿病・脂質異常症・高血圧・脂肪肝などの生活習慣病や脳梗塞・心筋梗塞・腎機能障害など様々な病気を招きます。生活習慣病が原因であることが多いですが、遺伝性・ホルモン異常により肥満を引き起こす場合もあります。治療としては食事療法・運動療法が主になりますが、背景にホルモンの病気などが隠れている場合は、その治療を行えば肥満は改善します。
内分泌疾患
ホルモンとは全身の様々な臓器で作られ、血液中に放出され他の臓器に働きかけることで、体の健康を保つために色々な調整を行っている物質です。ホルモンを作る臓器としては、甲状腺・副腎・下垂体などがあり、作られるホルモンも様々です。ホルモンの分泌の異常によって生じる病気を内分泌疾患と呼びます。
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<甲状腺>
首の前側、喉ぼとけの下のあたりに存在している臓器です。全身の代謝を活発にするホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンが過剰になれば代謝が亢進して発汗・体重減少・動悸などの症状をきたします。代表的な疾患としてはバセドウ病などがあります。甲状腺ホルモンの分泌が低下すれば代謝が落ちて寒がり・体重増加・むくみ・倦怠感などの症状が出ます。代表的な疾患としては橋本病(慢性甲状腺炎)などがあります。
甲状腺に腫瘍ができた場合、腫瘍が良性か悪性か調べるために、穿刺吸引細胞診(超音波で甲状腺の位置を確認し、細い注射針で腫瘍を刺して直接細胞を吸い出す検査)を行うこともあります。 -
<副腎>
腎臓の上、左右一対で存在している臓器です。副腎は皮質・髄質という2層の構造をしており、それぞれ別のホルモンを分泌します。
副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンは、いわゆる“ステロイドホルモン”の代表で、全身の代謝を調節しており、生命の維持に必須のホルモンです。このホルモンが足りないと、副腎不全という状態になり、食欲の低下や全身のだるさなどを引き起こし、生命を維持できなくなります。逆にこのホルモンが過剰になると、肥満や高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などを引き起こします。同じく副腎皮質から分泌されるアルドステロンというホルモンは体の中の塩分と水分の調整をして血圧を維持する働きがあります。アルドステロンが過剰になる病気を原発性アルドステロン症といい、高血圧をきたす他、カリウムというミネラルが低下する場合もあります。治療としては、アルドステロンをブロックする薬での治療、手術で副腎を摘出する手術療法があります。
副腎髄質から分泌されるカテコールアミン(ノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミンなどの総称)というホルモンは、心臓や血管を収縮させて血圧をあげる働きがあります。カテコールアミンが過剰になる病気を褐色細胞腫といいます。高血圧、頭痛、動悸などの症状を起こします。治療としては、手術で副腎を摘出する手術療法があります。 -
<下垂体>
下垂体は大脳の下に垂れ下がるように存在している臓器です。様々な内分泌臓器に働きかけるため、ホルモン分泌の中枢ともいえます。前葉と後葉に分かれており、前葉からは成長ホルモン・プロラクチン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモン・性腺刺激ホルモンが分泌され、後葉からは抗利尿ホルモン・オキシトシンが分泌されます。下垂体の腫瘍にはホルモンを過剰に出すものと出さないものがあり、過剰になるホルモンによって症状は多種多様です。また、ホルモンの分泌が低下することによっても様々な症状がもたらされるほか、下流の副腎、甲状腺、性腺などの機能低下も引き起こします。
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<副甲状腺>
副甲状腺は、甲状腺の裏側にある米粒の半分くらいの大きさの臓器です。上皮小体とも呼ばれます。通常、甲状腺の左右両葉の裏面の上下に2対、合計4個あります。副甲状腺ホルモンはカルシウムの代謝に働きかけます。副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される原発性副甲状腺機能亢進症では、血液中のカルシウムが上昇し高カルシウム血症をきたします。それにより、意識障害、嘔吐、倦怠感などの症状をきたし、腎臓の機能を低下させたり、骨折をきたしやすくなります。
ホルモンの異常は、採血検査や、それぞれの臓器を評価するための画像検査を行い診断します。また、ホルモンの機能を評価するために、複数回の採血を行うホルモン負荷試験や静脈サンプリング検査などの専門的な検査が必要で、当科では入院で高度に専門的な検査にも対応しています。
患者の皆様へ