私は平成17年に本学を卒業し、初期研修を経て代謝・内分泌内科へ入局しました。その後、約8年にわたり様々な経験を積ませていただき、平成27年4月から故郷である鹿児島県の市中病院で糖尿病内科医として勤務後、現在は実家のクリニックで日々診療を行っています。
私は医師を志した時点から、開業医として地域の方々のために働く姿をイメージしてきました。その際、しっかりとした専門性を持ちながら全身の疾患を幅広く診療でき、患者さんの日々の健康を守ることができる診療科として自分のイメージと合致したのが代謝・内分泌内科でした。
現在、糖尿病患者は予備群も含めると日本人の5人に一人といわれており、どの診療科を専攻したとしても避けては通れない疾患です。私は代謝・内分泌内科で様々な経験を積むにつれて、「糖尿病を診る」こととはただ血糖値を改善させるだけでなく、専門知識を駆使しながら様々な合併症を予防し、その患者さんの「10年後、20年後の生活を守ること」だと教えられました。
実際の糖尿病診療において、患者さんから感謝されることはそれほど多くはありません。むしろ、患者さんにとっては血糖コントロールが悪くて怒られたり、食事などの生活習慣に関して嫌なことを言われることの方が多いと感じていると思います。しかも私たちは、眼科手術や心筋梗塞に対するカテーテル治療、脳梗塞の血栓溶解療法など直接命に関わるような治療をすることはできません。しかし、それらの病気を予防できるように患者さんと20年間一緒に歩むことは、私たちにしかできない特別な治療だと思っています。
現在、私は鹿児島県で医療に携わっていますが、少し移動するだけでどんな診療も受けることができる首都圏とは異なり、地方では専門施設も少なく、糖尿病専門医であっても他の疾患について幅広く診療することが要求されます。
特に、甲状腺疾患や二次性高血圧など、皆さんが敬遠しがちな内分泌疾患に遭遇した場合でも自信を持って診療にあたることができており、これまでの代謝・内分泌内科での経験が自分の血肉となっていると実感しています。それもこれまでご指導いただいた先輩方や同僚、後輩たち、皆さんのおかげと心から感謝しております。
私のクリニックのある指宿市は人口3.8万人の小さな地方都市ですが、10年前に比べると人口は8割に減り、全体の35%が65歳以上の高齢者と、まさに都市部の10年後の社会で診療を行っています。市内には糖尿病専門医は私を含め2名しかおらず、その責任の重さに押し潰されそうになり、地域に貢献できているのか自問自答しながら、これからも代謝・内分泌内科で学んだことをさらに発展させていく所存です。
これから日本が向かっていく超高齢化社会において、代謝・内分泌内科での経験・知識は必ず大きな力になります。先生方の将来の選択において、私の思いが少しでも参考になれば幸いです。たくさんの先生方と同じ分野で診療できる日を心待ちにしております。