地域医療を支える良き伴走者を目指して
私は平成21年に本学を卒業し、初期研修を経て代謝・内分泌内科に入局しました。糖尿病専門医、内分泌専門医、学位を習得した後、平成31年に退職し、現在は故郷である愛媛県松山市で市中病院の糖尿病内分泌を専門とした内科医として勤務しています。
私は家業である地域の内科病院を継承することを一つの目標に、内科医として長期的に患者さんと関わっていくにあたり、理想的と思えたのが代謝・内分泌内科でした。
内分泌代謝学は、糖尿病を中心とした代謝疾患を主とする代謝学、内分泌疾患を主とする内分泌学に分かれ、両分野の専門性は高まる一方で、実臨床では両者を並行して診療する機会が圧倒的に多いのが現状です。私は退職するまでの8年間で、内分泌代謝学に関連する様々な疾患をバランスよく経験させて頂き、その経験が現在も自信となっています。近年、糖尿病治療は次々と新薬や持続血糖モニター、インスリンポンプ機器等が上市され、特にここ十数年で専門分野として飛躍的に進歩し、糖尿病患者さんの寿命延長、QOL改善に繋がっています。在局中には糖尿病の基礎はもちろん、最新のエビデンス・治療もタイムリーに経験、学ばせて頂き、糖尿病専門医を習得することが出来ました。内分泌疾患については、common diseaseが比較的多い甲状腺疾患に加え、副腎癌や褐色細胞腫の化学療法などの希少症例がコンスタントに集まる類まれなる施設である西部病院では、百聞は一見に如かずであり貴重な症例を沢山経験させて頂きました。また、近年はがん治療として注目を浴びる免疫療法の普及に伴い、がん治療も飛躍的に進歩を遂げていますが、一方で副作用である内分泌障害の診断、治療の需要も急速に高まっています。幸いがんが治癒したとしても、ホルモン補償療法は永続的となる可能性を考慮すると、その後に患者さんが日常診療を受ける場は今後の課題と考えます。実際、私は地域がん拠点病院の併存疾患センターで外来診療も行っておりますが、その患者数は目を見張るものがあります。そして、在局中に担当させて頂いた免疫関連副作用対策チームでの経験が非常に役に立っていることを実感しています。
私の考える代謝・内分泌内科の魅力のひとつは、患者さんと永く関わりあえることだと思います。40歳の糖尿病患者さん、40歳のホルモン分泌低下症で補償療法をしている患者さん、ホルモン分泌過剰症で治療をしている患者さんが80歳になるまでにどのような人生を歩んでいるのか、医療者としてどのように関わっていけるか、胸を膨らませています。今後は家業の病院に戻り、地域の方々の良き伴走者として、良質な全人的医療を提供できるよう日々精進していきたいと思っています。
令和の時代を迎え、より一層高齢化が進み、糖尿病を中心とした慢性疾患や悪性腫瘍を抱える人々が増加する中、一人でも多くの先生方に同分野で診療に携わって頂き、ご活躍されることを切に願っています。