本教室について

観察研究

副腎疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫・パラガングリオーマ、副腎癌など)の全国多施設共同研究

内分泌疾患の多くは、患者さんの数が多くなく、それゆえ診療法の確立に必要な科学的根拠が十分ではありません。そこで、我々の教室では、全国の多くの大学病院や専門医療機関とネットワークを作り、共同のデータベースやレジストリを構築し、臨床で抱いた“問い”に対して答えを得るべく様々な大規模臨床研究を行っています。

例えば、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けた重症型原発性アルドステロン症の診療の質向上に資するエビデンス構築(JPAS)や、難治性副腎疾患の診療に直結するエビデンス創出(JRAS)、国際医療センターを中心としたACPA-J研究にも中心施設の一つとして参画し、世界に向けて日本を代表した様々なエビデンスを発信しています。

これらの成果は、「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」や、「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン」など本邦のガイドラインに多数引用されそのエビデンスになっています。当教室ではこれらの研究成果を応用し、副腎疾患の患者さんに最新で適切な医療を提供していきます。

  • Hypertension.2020;75(6):1475-1482より引用

  • JCEM.2018;103(12):4456-4464より引用

一般検査所見からの急性副腎不全の予測モデル構築

急性副腎不全は原発性・続発性問わず副腎皮質機能低下症の方が、絶対的もしくは相対的にステロイド不足に陥ったときに発症する致死的疾患です。慢性的にステロイドの補償治療を行っている場合でも8.3/100人に発症すると言われ(感染症や手術といった侵襲による相対的なステロイド不足、胃腸炎による吸収不良など)ています。

致死的であり、ハイリスクな方が存在している疾患にもかかわらず、診断に用いるコルチゾールは迅速アッセイ可能な限られた施設を除き、結果は数日を要します。そのため、臨床現場では病歴・症候、一般検査所見から診断をせざるを得ないのが現状です。

そこで当教室では、副腎不全に特徴的なNa、K、Hb、血糖値や、血圧、CRPといった一般検査所見から急性副腎不全予測モデルを構築しました。

  • Sci Rep.2020; 10(1):13546.より引用

呼気アセトンチェッカーを用いた血中ケトン体濃度と呼気アセトン濃度との相関性の評価

ケトン体とは1型糖尿病の発症時および治療中断時などで、高度にインスリン作用が低下したときに産生が増加します。血糖が高い時にケトン体が上昇している場合、糖尿病ケトーシス/糖尿病ケトアシドーシスと呼び、急性代謝失調として早急な治療が必要です。また、ケトン体の上昇は脂肪分解を意味しており、定量的に評価することは代謝の状況を把握する上で、とても重要です。現在、ケトン体は尿検査や血液検査で評価しており、結果が判明するのに数日要することもあります。

ケトン体の一種であるアセトンは、揮発性のためほとんど代謝されないまま呼気中へ排泄されます。TANITA社が開発したFat-burning Monitor(FM-001)は呼気中のアセトン濃度を簡便に、迅速に定量化できます。本研究では、このFM-001を用いて糖尿病患者さんのケトン体が評価できるか検討しています。

  • 呼気アセトンチェッカーの実際

Flash Glucose Monitoring (FGM)を用いた糖濃度の連続モニタリングによる血糖コントロール改善

近年、デバイスの進歩もあり、血糖は「点」ではなく、「連続変数」として、捉えることが可能になりました。「連続変数」として捉えられるメリットして、今まで評価が難しかった深夜の血糖が測定可能になったことが挙げられます。深夜の低血糖は無自覚であることがある一方で、重症となれば、認知機能低下や致死的不整脈、虚血性心疾患、死亡のリスクとなりえます。本研究では、HbA1cなどの指標では適切な血糖コントロールである患者さんに対して、無自覚性の低血糖の有無について、FGMを用いて検討しています。

また、糖尿病初期の患者さんでも、血糖値をリアルタイムに自覚できることで、行動変容を促し、生活習慣や血糖コントロールの改善につながるのではないかという仮説を立てています。そのようにFGMがもたらす血糖コントロールの変化に対する解析も行っています。


連続血糖モニタリングの例

1H-MRSを用いた脂肪肝の定量的評価

肥満はインスリン抵抗性を惹起させ、メタボリックシンドロームの最も重要な病態と認識されていますが、肝臓に脂肪が蓄積すること(脂肪肝)もインスリン抵抗性を規定する因子の1つと考えられています。本研究では、非侵襲的に肝内の脂肪含量を測定することができるProton Magnetic Resonance Spectroscopy(1H-MRS)を用いて、健常人や肥満を伴う糖尿病患者さんにおける非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の病態解明と糖代謝異常との関連について検討しています。

1H-MRSによる肝内中性脂肪量(IHL)測定法

1.5 TのMRIを使用し、IHLの算出はMRS解析用ソフトLC モデルにより測定します。

  • 左図.肝臓MRI 右図.解析用ソフトによる解析

CTを用いた体脂肪量の体積での評価

体脂肪の評価法には、CT、MRI、2重X線透過撮影法(dual energy X-ray absorptiometry:DEXA),生体電気インピーダンス法などがあり、本邦では臍レベルでの腹部CTによる内臓脂肪面積が最も汎用されています。私たちは腹部CTから腹部内臓脂肪総体積,腹部皮下脂肪総体積を瞬時に解析するソフトを共同開発しており、本研究ではこの評価法を用い健常者の腹部内臓脂肪・皮下脂肪総体積の脂肪分布を検討しています。

腹部CT検査の撮像,そして脂肪体積解析法

肝上縁から骨盤底までスライス撮像し、脂肪体積を算出,積算します。

  • 左図.CT:赤は内臓脂肪、青は皮下脂肪を示す。

  • 右図.内臓脂肪のみ抽出し、3D構成したもの。

マルチ周波数体組成計(MC-190)を用いた妊娠糖尿病におけるインスリン抵抗性と筋肉量との関連性についての検討

人間の筋肉量を正確に測定する標準的な方法として、二重エネルギーX線吸収測定法が知られていますが、放射線を使用する検査です。しかし、TANITA社が開発した体組成を評価できる機能を備えたマルチ周波数体組成計(MC-190)を用いることにより、放射線を使用せず、安全に妊婦さんの体組成を測定することが可能となっています。本研究は、TANITA社製マタニティモード付きマルチ周波数体組成計MC-190EMを使用し、妊娠糖尿病患者さんの筋肉量とインスリン抵抗性との関係を明らかにすることを目的とし研究しています。

腹部CT検査の撮像,そして脂肪体積解析法

肝上縁から骨盤底までスライス撮像し、脂肪体積を算出,積算します。


図.マルチ周波数体組成計(MC-190)病棟に常備。

糖尿病ケトアシドーシス治療の適正化の試み

糖尿病ケトアシドーシスは絶対的なインスリン欠乏を原因とした、急性代謝失調のひとつで、未だ死亡率の高い合併症です。治療には経静脈的なインスリンの持続投与と大量補液を行いますが、電解質異常や脳浮腫に注意しながら管理する必要があります。現在、推奨されているインスリンや補液の投与量は海外でのデータを参考にしたものであり、日本人に対する治療として適切かどうかは検討が不十分です。当院は3次救急対応を行っており、数多くの糖尿病ケトアシドーシスの患者さんを治療してきました。本研究では、過去の糖尿病ケトアシドーシスの症例の経過を振り返ることで、治療の適正化を検討しています。